頑張らなくていい。保育士が人生を取り戻すためのうつ病対策
私に限ってうつ病になるなんて…?
そう思っている人は意外に多いのではないでしょうか。しかし、それでもなってしまうことがあるのが、うつ病です。
保育士はもちろん、子どもたちに授業する教師、お世話をすることが多い看護師や介護士、人から悩みを相談されることが多い心理士など、人を助ける仕事に就いている人は、うつ病によって仕事を辞めてしまうケースが後を絶ちません。
やはり、仕事で人を助けていくなかで、助けたい人がもつマイナスの感情から影響を受けてしまうことが考えられます。
保育の現場でも、「本当は保育士に向いていないんじゃないかな…」、「仕事がうまくできないなぁ…」と思い詰めたり、無気力になったりする保育士がよく見られます。
でも、そもそもうつ病とはどんな病気なんでしょうか?予防するためにも、詳しく見てみましょう。
うつ病とは?
何か嫌なことがあると、だれしも人間ですから、少し憂鬱な気分になったりすることがあるものです。
この「憂鬱な気分」の中には病気ではないものもあります。
病気では無いような憂鬱気分は、大体少し時間がたつと、その時間とともに良くなっていくものですが、うつ病と診断されるくらい強いうつ状態から回復するには、時間が経てば治るというものではありません。
このように鬱状態にある事が長引き、自然に治ることがない、という状態になってしまったのがうつ病と呼ばれています。
↓厚生労働省も取り上げており、今日本では重要な病気のひとつです。
うつ病|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省
うつ病の症状
うつ病の主な症状は2つに分けられます。
まず1つ目が心に出る精神症状と言うもの、そして2つ目が、体に実際に不調なことが起こる身体的症状と言うものです。
精神症状と身体的症状は、それぞれどんなことが起こるのでしょうか。具体的に見てみましょう。
うつ病の精神症状とは
代表的な精神症状は3つあります。
1. あらゆる意欲の減少
まず1つ目が、「これをやってみたい」と言う意欲の低下です。何もやる気が起きなくなり、今まで好きだったことにも楽しいと感じられなくなったりします。
また、どんな動作をするのもめんどくさいと感じたりするようになります。
保育園に行きたくない・・・と思うのも、こういった意欲の低下が原因であることが多いです。
2. 思考・判断力の低下
1つの作業に集中することができなかったり、注意力が欠けたりとするような状態が続くようになります。
こういった状態から仕事でミスをしてしまい、さらに怒られたりして自信をなくしてしまう、と言う状態に陥ることもあります。保育園で働いている時に注意力散漫になったら、とても危険ですね。
ひどくなると妄想が現れ、例えば自分が重い病気にかかってしまったんだ!と思い込んでしまう場合もあります。
3. 不安・イライラ
今まで笑顔だった人が、全く笑顔にならなくなります。また、特に理由がないのにいきなり泣きたい気分になったり、号泣したりということもあります。
一般的にですが、大体朝の方がこの症状はひどく、夕方に向かうにつれて少しずつマシになっていくと言う症状があります。
また、こういった状態から「もう死にたい」と自殺願望がでる場合もあります。
うつ病の身体的症状
うつ病の身体的症状は3つあります。
風邪をひいたら熱がでたり、喉がいたくなったりしますよね。これが身体的症状です。
精神的な症状しかでないと思われがちなうつ病ですが、実は身体症状にもかなり特徴的なものがあるんです。
1. 疲労感の増大
今まで元気に保育園に行けていたのに、何となく体がだるくなったり、疲れやすくなったということがあります。以前とおなじように仕事をしているのに、夕方になるともう立ち上がる元気もない・・・という保育士さんは要注意です。
こういった症状は加齢によるものの場合もありますが、どれだけ休んでも回復しない、と言うのがうつ病の特徴です。
2. 食欲の減少・異様な増大
今まで好きだったものを食べても美味しくないなぁと思ったり、そもそも食事をしたくないと思うようになります。
そのため、食事はあまり取らなくなり、体重も減っていきます。
個人差はありますが、ひどい人ですと大体1ヶ月で10キロも落ちてしまうことがあります。
また、これとは逆に、今まで以上の量食べるようになる、と言う過食の傾向が出る場合もあります。
3. 不眠
夜の寝付きがわるくなる、布団にはいったのにいつまでもどきどきして寝られない・・・というものがあります。また、せっかく寝付いても夜中になんどもおきてしまう、という方もいます。
しかも困ったことに、夜の寝付きは悪いのに、朝はかなり早朝に目が覚めてしまう、というのもうつの特徴です。
そのため、日中を睡眠不足の状態でぼーっとしながら過ごすことになります。
多様な身体症状
その他の身体症状としては、人によりますが、先程の例のように、頭が痛くなったりめまいがしたり吐き気がしたり、ということがあります。
それ以外にも、理由もなく汗がどっとでたり、口が渇いたり、息苦しい感じがする、といった自律神経の症状が現れたり、お腹の調子が悪くなるとような胃腸症状が出ることもあります。
うつ病にならないためには?
では、何に気をつければいいのでしょうか?
まず、ハードな労働環境に身を置く保育士が、うつ病にならないために気を付けること、心身を健康に保ちながら仕事を続けられるようにするために大切なポイントをご紹介します。
基本はしっかりと「1日3食」
毎日の食事は、身体的にはもちろん精神的にも、健康を保つために大切です。
保育士の朝は早く、とても忙しいために「今日は早番だし、朝食を抜いちゃっても平気かな」と朝食を抜いて出勤してしまい、午前中から後悔してしまう保育士は珍しくありません。
お昼は、子どもたちと一緒に給食を食べます。そのときには、先輩や同僚に対して遠慮せず、女子を捨てる勢いで食べちゃいましょう。活動的に仕事をする保育士ですから、お昼を多少食べすぎたくらいでは、体重に影響することは少ないでしょう。
逆に食べないことで体力面ではもちろん、気持ちの面でも弱ってしまいます。しっかりと味を感じながら食事することが大切です。
忙しい朝には、食事の準備に時間がかからないフルーツを中心に食べてみてはいかがでしょうか。行事の前などで仕事が辛いと感じるときでも、毎朝食べるフルーツが保育士の元気を支えます。フルーツには午前中の活動に必要な糖質はもちろん、お肌に優しいビタミンも豊富なのがうれしいですね!
最近では主食を抜くような無理なダイエットも流行っています。たしかに一時的には痩せるかもしれませんが、動けなくなてしまってはダメですよね。ごはんはしっかり食べましょう。
子ども達と元気いっぱい走り回ったり、テキパキ掃除をしたりしているうちにしなやかな筋肉がついて、引き締まってくるはずですよ。
休みの日には、外でリフレッシュを!
月曜日から金曜日まで残業に追われ、さらに持ち帰り仕事もあっては、休みの日くらいずっと布団の中で引きこもりたくなる保育士もいるのではないでしょうか。
布団で身体を休めていれば、体力的には回復するかもしれませんが、気持ちの面がリフレッシュできないことがほとんどです。とくに、布団に引きこもったままでは、気持ちが内向的になり、うつ病になりやすくなるといわれています。
まずは、せっかくのお休みですから、家の外に出ることから始めてみませんか?
ウィンドウショッピングに出かけたり、カフェでお友達と女子トークに花を咲かせたり、図書館で静かに読書したりなど、気分転換をすることが心の疲れをとるために大切です。
連休であれば、ハイキングやお花見、海などに行って、日ごろあまり感じられない自然に身をゆだねてリフレッシュしてみるのもオススメですよ!
外に出るのがあまり好きでない人は、部屋に自然光をいれることを心がけましょう。1日中カーテンしめきり・・・というのは、身体のリズムも狂いよくありません。
日中にしっかり太陽の光を浴びるようにしましょう。
保育業界以外の人との時間を大切にする
保育業界は、とくに閉鎖的なところが目立ちます。あまり外の世界に接することがないというのが、実は保育士がうつ病になりやすい一因と言われています。
ランチひとつとってもみても、一般的な会社員であれば外でランチする機会もありますが、保育士は子どもたちと一緒に給食を食べます。基本的に外部への出張もありませんから、1年間ずっと変わりようのない保育室に同じ子どもたちを迎え、さらに同僚や保護者も同じメンバーで過ごし続けることになります。
つまり、保育士はいつもかかわっている「保育関係者」以外の人に会うチャンスが極めて少ないのです。
たまに業者さんが備品を納品に来ますが、それさえも「保育関係者」以外に思わずカウントしてしまいたくなります。
保育業界に長くいることで当たり前になってくることの中には、他の業種の人からすれば「ありえないこと」だらけだといわれます。
したがって、休日にはもちろん、仕事帰りでも他の業種に勤めている友達と食事したり飲み会をしたりして、保育業界では感じることができない刺激や価値観に触れてみることが大切です。
女性中心の職場に勤めていると、いろいろな愚痴を言いたくなると思います。
そのときにも、同僚に言うより他の業界の人にいうのがオススメです。なぜなら、職場の人に話した愚痴は、尾びれ背びれがついて職場内に広まり、ほとんどのケースで自分に倍返しされてしまうことがあるからです。
趣味の時間を大切にする
とくにハードな労働環境に身を置いている保育士ですから、趣味の時間を何よりも大切にしたいところです。
好きな映画を観に行ったり、ライブやコンサートに行ったり、本や漫画を読んだり、料理やお菓子を作ったりと、趣味に没頭する時間には、毎日の業務であまり感じられないたくさんの「ワクワク感」があることでしょう。
この「ワクワク感」が仕事へのモチベーションにつながり、人間関係などからくるストレスも抑えられるのです。
仕事で使う体力と、楽しいことに使う体力は「別モノ」です。毎日の残業で疲労困憊だったとしても、音楽好きな保育士では「週末のライブや夏フェスに行くぞ!」とモチベーションを保っていることで、健康的に過ごすことができます。
平日の夜には、布団から起き上がれないくらい疲れているのに、週末の元気はどこからやってきたのかと思うほどですよね。
つまり、趣味などの楽しいことに費やす時間こそ、うつ病にならないための「最強の予防薬」となるのです。
「徹夜はしない」セルフルールを
学生の頃であれば、提出期限の迫ったレポートに追われて、徹夜で頑張ったこともありましたが、社会人で徹夜をすると翌日以降に大きな悪影響があります。
たとえ持ち帰り仕事がたくさんあったとしても、「徹夜はしない」というセルフルールをつくって、守ることも大切です。
できれば、どんなに夜が遅くなったとしても、日付が変わる前には布団に入って休むことを目標にしましょう。どうしても仕事をしなければならないときは、その代わりに、早起きをがんばるのです。
夜に粘っても進まないような仕事でも、朝にやるとあっさり片付くことが少なくありません。これは、脳みそが睡眠を取ることリフレッシュすることと、持ち帰り仕事にありがちな「考える仕事」は朝や午前中に向いていることがあるからです。
職場からのお誘いは「月1ペース」で
職場の飲み会は、得意な人と不得意な人に分かれます。ある保育園では、週2回ペースで仕事終わりの飲み会をやっていました。先輩から数人だけの飲み会に誘われ続けると、日ごろからお世話になっていることもあり、なかなか断りにくいものですね。
ただでさえ早番で出勤して残業したにもかかわらず、そこから22時過ぎまで先輩に付き合わされる飲み会が続く状況には、心身ともに疲弊してしまいます。日中から残業まで、さらにその後の飲み会まで仕事関係の人と過ごすことに対して、ストレスを感じてしまう人が少なくありません。
個人差がありますが、職場の飲み会は「月1ペース」くらいがちょうど良いのではないかと思います。
子どもから癒されて、心身を健康的に
子どもにとっては、大人からスキンシップされると愛着を感じてうれしくなります。実は、大人にとっても、子どもとのスキンシップにはとても大きな効果があるのです。
赤ちゃんの柔らかい肌をやさしく抱きしめるときでも、クラスのイタズラ好きな男の子をしっかりと抱きしめながら諭すときでも、子どもにスキンシップをしているときには、私たちにも幸せホルモンが分泌されます。
「オキシトシン」といわれるこの幸せホルモンは、ママが赤ちゃんに母乳を飲ませているときに分泌されるホルモンとしても知られています。
つまり、子どもとスキンシップをするという行為から、子どもの体温を感じ取りオキシトシンが分泌され、幸せを感じることができるのです。
子どもも、保育士さんとふれあうことで愛情をたっぷり感じて、まわりのお友達と仲良くなったりという社会性を身につけます。子どもにとっても保育士さんにとっても、スキンシップをとることはメリットがあることなんですね。
これは、仕事のなかで子どもたちと触れ合える保育士ならではの特権でしょう!ぜひ、積極的に子どもたちとのスキンシップを意識して、うつ病予防につなげていきたいですね。
あなたは大丈夫ですか?
ここまで読んで、はっとした人はいませんか?
もしかして私はうつかもしれない・・・と思っている保育士さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
でも、いきなりメンタルヘルスクリニックを受診するのは勇気がいりますよね。そんな方は、まずこちらのセルフチェックをやってみてください。
もちろん、これで全てのうつ病の診断ができると言うものではありませんが、最近少し調子が悪いな・・・と思っている方は確認のためにやってみてくださいね。
(うつ病はとても繊細な病気です。自分の症状が深刻だと思われる方は、すぐ病院に行きましょう。)
保育士のためのうつ病セルフチェック
今からいくつか質問をします。それぞれの質問に対して、下記のように点数を足していってください。
セルフチェック方法はとっても簡単
- 「あてはまらない」というのであれば 0点
- 「時々ある」ということであれば 1点
- 「よくある」と言うのであれば 2点
- 「常にある」というのであれば 3点
そして、それぞれの質問の合計の点数をだして、その合計点数によってうつ病かどうかチェックします。
それでは質問を始めます。質問は全部で12個ありますので、リラックスしてやってみてくださいね。
うつ病セルフチェックのための質問
- 朝起きた時に、体がだるくて疲れたなぁと思う事はありますか。
- 最近、気持ちが落ち込んだり、気分が重たくなったりすることがあるありますか。
- 朝と夕方で比べると、朝の方が何もしたくない!と言う気分が強い、ということありますか。
- 肩こりや首のコリが強くなって、とても気になる、と言う状態ではありませんか。
- なかなか夜眠れないのに、朝とても早い時間に目が覚めてしまう・・・と言う事はありませんか。
- ご飯を目の前にしてもなかなか箸が進まない、ご飯の味がわからないと感じる事はありませんか。
- 息苦しいなぁと思う事はありませんか。
- 喉の奥にご飯が詰まってるような感じがするという事はありませんか。
- 仕事をしていても作業の効率が悪い、よくミスをしてしまうという事はありませんか。
- 何をやってもつまらない、自分の将来がまったく面白そうでないと感じることありませんか。
- 前にも、今と同じようにゆうつな症状が現れたと言う事はありませんか。
- 几帳面で、仕事に対しても真面目に取り組むタイプですか。
質問は以上です。
結果を採点してみましょう
合計点数はどうなりましたか?その点数を、下記と比べて見て下さい。
- 10点以下の人はあまり問題がありません。
自分のストレスを正しく解消することができているようです。 - 11点から15点の人は少し危険です。
今ですと大丈夫ですが、そのままですと鬱になってしまう可能性もあります。日ごろから気をつけてチェックするようにしましょう。 - 16点以上の人は、もう既にうつ病になっているかもしれません。
早めにお医者さんに行ってみるようにしましょう。
これらはあくまでもセルフチェックのためのものです。少しでも心配だなと思った方は、医療機関に相談してみるようにしましょう。
ではこのうつ病予を防するために、まずはうつ病について理解するところから始めていきましょう。
いっぱいいっぱいになってしまう前に
責任感の強い保育士ですから、「もうダメ、誰か助けて…」、「これ以上は限界かもしれない…」と、自分を追いつめてしまう人もいます。
しかし、大好きな保育士の仕事で追い詰められなくてもいいのです。
保育士になったとき、どんな先生になりたいと思っていましたか?
「今からはもう思い出せないよ・・・」という方、今からだって、自分が理想としていた保育士さんになれるんです。
決して、自分を責めないでください。
転職して職場を変えたり、少し休職したり、たくさんの方法があるのです。そしてそれは決して、「逃げること」ではありません。
下記のように、公的機関で相談にのってくれる窓口もあります。
一人で抱えずに、勇気をだして相談してみましょう。