保育士、生きろ。

~低賃金・重労働。保育士問題のリアルを追う最新レポート~

保育士が見たブラック保育園の実態。騙されない方法を考える

保育士が足りない、という話で話題になるのが「保育士はきついのにお給料安い仕事だから、増えるわけがない」ということ。

では、保育士の仕事ってどれくらいきついんでしょうか?きっと、保育士として働いている人でないとなかなか実感わかないのではないかなと思います。

 

たくさんの子どもたちを一度に預かるという緊張感。

元気いっぱい走り回る子どもたちに、たくさん愛情をもって接するように動き回ること。

 

でも、本当にきついのは、「保育」ではなく保育園というブラックな気質をもった組織だという場合も多いのです。

劣悪な労働環境で注目を浴びた歴代のブラック企業顔負けの体制が残っている保育園もあります。

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ありえない環境でも言えない。気づかない。

けれども、そこで働く保育士には守秘義務がつきまとうため、保育園の中で起きてい出来事については、基本的に口外することは許されません。

さらに、他の業種で働いている人たちと違って、仕事をする中でかかわる人といえば、ほぼすべてが同業の女性だけという環境です。保育士に出張や営業活動は、無縁といっても過言ではありません。

そのような狭い環境で働き続けることで、他の業種では「ありえない」ことさえ、だんだんと当たり前のことに思えてくるのです。

 

今日は、私が保育園で見てきた驚きのブラックエピソードをご紹介しようと思います。

連日のサービス残業・・・労働時間がブラック

残業と持ち帰り仕事に追われている、それが保育士のイメージではないでしょうか。実際のところ、各保育士のキャパシティを超える仕事量を抱える人は少なくありません。

 

深夜22時過ぎまで、保育園の明かりが灯ったまま・・・ということも珍しくない保育業界なので、毎日続く残業で体調を崩す人は珍しくありません。

早番だと朝6時半頃から働き始めているので、22時すぎになると立っていられないほどの疲労と睡魔に襲われることもしばしばです。

 

それにもかかわらず、「残業代が0円」という保育園がほとんどなのです。多くの保育士は、サービス残業をしながら、書類の作成や行事の準備に追われているのが現状です。

 

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残業こそ「奉仕の心」で

他の業種の人から見れば、効率を高めて既定の勤務時間内に仕事を片付けて、定時で帰れるようにすればいいのでは?と思うのではないでしょうか。

しかし、そのような考えをもって、定時に帰っていたある保育士は、最終的に園長に呼び出しを食らい、「奉仕の心が足りない」とお叱りを受けていました。

 

自分の業務が終わっても、他の保育士に仕事が残っていたら、一緒に残業して手伝うことが当たり前だという考え方が一般的な業界なのです。

なかには、「残業は子どもたちへの愛情」との価値観をもつ保育士さえいるのです。

 

もちろん、定時に帰れるようにすればいいのではと思っていた保育士は、翌年の春には退職していきました…。

 

タイムカードは存在しない

多くの保育園では、出勤の記録として、手書きの出勤簿に印鑑を押す形をとっているのではないでしょうか。

一般的な企業では、タイムカードを打刻したり、タッチ式のカードを用いたりして、勤務時間の管理を行っています。

けれども、保育園は 厳密な勤務時間の管理はしないことがほとんどです。何時に出社し、何時に退社したのか、記録も管理もされていないのです。

 

ある保育士が以前勤めていた保育園では、目前に控えた監査に備えて、「全職員分の出勤記録を上司が書き直す事案」が発生したそうです。

いうまでもなく全員が定時に出勤して、定時に退社したことにされました。園のブラックさがバレてはいけないと思ってなのか、上司は「ホワイトな出勤簿」になるように「キレイに漂白」したのです。

 

ある弁護士によると、そういうケースは2年以内であれば訴えられる可能性が高いと指摘します。しかし、今後の職場内の人間関係などを考えると、ありえないことでも大事にしたくないという保育士が多いのではないでしょうか。

 

このように出勤に関する記録をごまかされても、勇気をもって訴えるという選択をする人は限られているといえるでしょう。

 

労働時間に苦しんでいる人は

今回はブラックエピソードの紹介のため、「労基的にありえない」という事例でもそのままご紹介しています。でも、サービス残業を強いたり、長時間労働を課すことは「違法」です。

労働時間が長すぎて身体を壊してしまう前に、管轄の労働基準監督署などに相談しましょう。

労働基準監督署 | 東京労働局

自分の健康より優先して良い仕事はありません。憧れだった保育士という職業で長く働くためにも、健康第一で働ける環境を選びましょう・・・。

 

まるで昼ドラ?どす黒い人間関係でストレスがたまる

職場内の人間関係に悩む保育士は、驚くほど多いものです。女性同士ならではの人間関係の難しさがあり、カンタンにいかないことがほとんどです。

けれども、「許されざる非常識」なエピソードも、少なからず存在するのが保育園の恐ろしいところです。

園長家族と親しくなりすぎてしまい…

家族経営の保育園に勤める保育士も多いと思いますが、「経営者との近すぎる付き合い」が、時に災いとなって帰ってくることがあるので注意したいところです。

たとえば、夫婦で経営している保育園のケースでは、その夫婦と親しくなることでプライベートでもお誘いが増えてくることでしょう。ホームパーティに呼ばれるくらいであればいいのですが、経営者の子どもの世話を個人的に頼まれるようになると、自分のプライベートの時間であっても、遠慮なく干渉される可能性が高まります。

 

とはいえ、あえて経営者と親しくなることで、職場内での揺るがない自分の立ち位置を確保しようと考え、積極的に親しくなることを企む保育士もいます。そうすることで、副園長や主任、リーダーよりも強い発言権を得られると思う人が多いものです。ここに「大奥」 的な女性の世界ならではの怖さを感じずにはいられません。

 

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もちろん、経営者に取り入られようとした言動をする様子は、他の同僚が意外なほど見ているものです。そういう人こそ、実は味方を失っていくことに気付けていません。

 

エラいのは、「いじめに耐える保育士」?

いじめが起こりやすいのは、女性の職場ならではのことではないでしょうか。なかでも、保育園の職員同士でのいじめは、よく聞く話です。

笑顔で「お友達には優しくしましょうね」と子どもたちに諭している保育士に限って、裏では平気で同僚への意地悪にいそしむものですから、不思議なものですね。

 

保育業界でいじめが残り続ける原因、その1つに「通過儀礼化するいじめ」という事実があります。

あえていえば、「新人時代に、先輩からひどいいじめに遭ったのだから、あなたも新人のうちはわたしのいじめに耐えなさい!」というような、一人前になるために必要ないじめがあるという価値観を押し付けられてしまうことがあります。

 

たとえ、周囲の保育士にいじめられた被害を申告したとしても、「それは誰もが経験すること」として相手にしてもらえないことがほとんどです。

 

当然のことではありますが、「いじめが人を育てる」ことは絶対にありません。

保育所保育指針に、「いじめが人を育てる」と書かれているでしょうか。

残念ながら、自分がされて嫌だったことを、自分よりも立場の弱い人に対して経験させたくなる「人格的に恥ずかしい人」が少なくありません。

 

自分の苦しかった過去をどうにかして肯定したいためだけに、後輩をいじめてしまうのです。

 

交通費は「園長のお気に入り」だけ?

本来であれば、就業規則で定められているはずなのが、保育士の給料ではないでしょうか。とくに、法人であればなおさらそうでなければおかしいはずです。

 

しかし、不思議なことが起こり得るのが保育園というところです。

ある保育士は、なぜか通勤費用を満額もらえないことがあったといいます。契約時に園から渡された書類を確認すると、「交通費は月2万円まで支給」と明記されていました。その保育士が請求できる額は1万5千円なので、規定の範囲内であることは言うまでもありません。

けれども、支給されていたのは、1万円だけでした。

 

急いで経理担当に確認したら、逆に「園長先生が満額払うことを約束したか」について質問されました。口頭でも約束していなかったため、「約束していません」と伝えると、「それであれば、1万円ですね」と返答されました…。

もちろん、納得できる答えではなかったので、他の保育士はどうなっているかを聴きまわってみました。すると、交通費を満額支給されている保育士もいれば、そうでない保育士もいるのでした。

その基準は「園長のお気に入り」かどうか。交通費を満額支給されるのはお気に入りだけだったのです。

さすがにバカバカしいと感じたその保育士は、すぐにその園を退職したそうです。

 

ほかにも、園長のお気に入りの職員だけ、冠婚葬祭へのお金をもらえるなどといった逸話もありました。給料でないとはいえ、そのようなやり取りにまで「園長の私情」が当たり前のように絡んでくることに、大人が働く職場環境とは思えず、ただただ驚かされました。

 

人間関係に悩んでいる保育士は

今まさに人間関係で悩んでいる、という保育士もいるでしょう。

その時は、まずほかの人に相談してみてください。話すだけで、自分の心が軽くなることもあります。

知り合いに話しにくい時は、行政の相談サービスを活用してみるのも良いでしょう。思ってもみなかった解決方法が見つかるかもしれませんし、なにより、あなたの心や身体を守ってくれます。

 

例:東京都大田区の場合。このように、相談窓口を設けている行政が多いです。

大田区ホームページ:女性のためのたんぽぽ相談

 

転職の時まで「ブラック」な保育園

あまりにブラックな保育園で「もう働けない!」と考え始めたときに、転職が頭をよぎるのではないでしょうか。けれども、転職したいと思っても、思うように転職が進まないという保育園は少なくありません。

執拗に「次の職場」を質問責め

一般的に、新しい転職先が決まった状態で働き続けるのは、やりにくいところもあるのではないでしょうか。とはいえ、心を鬼にしながら、周囲のうわさ話には耳を塞いで、与えられた業務をやり遂げることは大切です。

 

しかし、上司や同僚によっては、

「次の園はどんなところ?」

「お給料はどうなの?」

「次は何歳児を担当するの?」

などと辛辣な質問責めをしてくることも珍しくありません。

 

違う職場に移っていく同僚を、優しく送り出す余裕のある人は残念ながら多くないかもしれません。

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退職を申告するのは「1年前」?

どの会社でも、退職をする1〜2か月前に退職の意思を書面で示すことが一般的ではないでしょうか。多くの保育園でも、おそらく職務規定上では、同様に定められているはずです。

 

しかし、来年度のクラス編成のことなどに配慮すると、保育業界では3か月前には申告しておきたいところです。(ただし、残り3が月は働きにくいかもしれませんが…)

 

困ったことに、3か月前でも「遅い!」と怒られることがあるのが、保育業界です。ある保育士のケースでは、「次のステップに進むために、年度末で退職したい」と、6月頃に主任に話したそうです。退職の10か月前での相談ですから、退職の申告としてはかなり余裕があると思われるのではないでしょうか。

 

けれども、その主任からは「なぜもっと早く言わなかったのよ!」と怒声を浴びたそうです。主任の言い分は、退職したいことがわかっていたなら、他の先生に年長クラスを頼んでいた、クラス編成を行う前に申告してほしかったというものです。さすがにその保育士は、ショックを隠せませんでした。

 

「退職の1か月前に申告」することが契約でも決まっていることですが、余裕をもって申告しても怒られるケースがあるのは、保育士の辛いところではないでしょうか。

 

 

まだまだ、保育士のブラックエピソードは終わることがありません。

こちらにも辛かったときの話などをまとめてみますので、見てみてくださいね。

 

 

保育士の過酷な業務

保育士の残業

「ブラックな保育園」に1人で立ち向かわない

ご紹介したようなエピソードに似た体験をした保育士は、意外に多いのではないでしょうか。就職してしまった保育園のブラックさに後悔しつつも、なかには職場環境をどうにか改善できないものかと、必死に立ち向かう人もいます。

けれども、職場内カーストの頂点に君臨するのが園長先生であることに変わりありませんから、1人の職員の正義感が、職場環境そのものを変えることはかなり難しいことでしょう。

ブラックな面を正そうとするあまり、園長先生やそれを支持する職員などからいじめのターゲットとされたり、肝心の保育に集中できないほどの業務過多に陥れられたりした事例もあります。

 

経営者ではなく、あくまで「雇われている立場」である以上、別の保育園を探す方法を選択してもいいのではないでしょうか。

 

ブラックな保育園に我慢しない

いかがでしたか?今現在、まさに「ブラックエピソード」のようなつらい経験をされている方もいらっしゃると思います。

「つらいな」と思ったら、「これは通過儀礼」「先輩たちも一度は通ってきた道だ」と思い込んでがまんするのではなく、勇気をだして一歩踏み出してみましょう。

 

ブラックな保育園では、通常ではありえないというようなことが平然と行われている時もあります。「我慢できない自分は忍耐づよくない」と思わずに、正しくないことは正しくない・良くないと思って行動できるようにしましょう!

 

ブラックな保育園に転職しないためには

ブラックな保育園に苦しんでいる保育士さんには、転職を強くオススメします。そうなると今度は、どうやったらブラックでない保育園に転職できるか、ということが気になりますよね。

 

今、たくさんの保育士さんの求人サイトがあります。求人を検索してみると、ずらーっと並んでいます。しかも驚くことに、どの求人サイトをみても、高待遇なものばっかりなんです。

しかし、この状況を素直によろこぶことはできません。このたくさんの求人、なかには待遇を「盛っている」ものもあるからです。

 

そんな悪質なうそにひっかからないために、ブラックな求人を見抜くコツを考えてみました。

ブラック保育園に引っかからない求人の見極め方

残業の記載の仕方に注目

まず注目すべきなのは「残業」についてどのような記載があるかです。

「残業がたくさんあります」と明言している保育園はないと思います。だれだって残業があることを嫌がるからです。

実際に残業があるかどうかを見抜くのは、実はお給料のところに記載されています。お給料のところに「みなし残業手当」「固定残業手当」という文字列が書いてあったら、その求人は注意してみてみるようにしましょう。

 

実は、みなし残業や固定残業と書いてあるようなところは、ある程度残業が発生している保育園がほとんどです。もちろん、規定上かいてある、という保育園もありますので、実態は要チェックです。

 

試用期間の待遇

正社員でもパートでも、勤務開始から一定期間が「試用期間」の扱いになっている場合が多いです。

就職がきまって雇用契約書をみてみると「試用期間」とかいてあるところはありませんか?

 

この、試用期間があることはごくごく一般的です。ですが問題は、その期間の待遇なんです。

通常ですと、ちょっとだけお給料が低いか変わらない、という程度です。自分が経営者だったら、と考えると、全く知らない人を採用するわけですから、様子見として若干お給料を下げるというのは納得できますね。

ちゃんと働ける人かどうか、その前に安全な人かどうか分からない人を自分の保育園にいれるわけですから、ちょっとは様子見させてね、というわけです。

 

でも中には、「試用期間」にかこつけてとんでもない待遇を強いる保育園もあります。

雇用形態がちがっていたり、お給料の下がり方があまりにも大きい。ということがあります。

 あれ・・・?というほどであれば、必ずサインする前に確認しましょう。

また、面接の段階で、必ず試用期間の有無・長さ・待遇について確認しておきましょう。

試用期間について疑問に思うことがあれば、管轄の労働基準監督署に相談してみるのも良いようです。

参考:労働基準監督署へ多く寄せられる相談事例 | 長野労働局

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まとめ

いかがでしたか?

現実にあるとは思えないようなブラックエピソードですが、保育関係者の方々は遭遇したことがある人も多いのではないでしょうか。

過酷な労働環境で働くのは、心身ともに悪影響です。身体を壊してしまう可能性もありますし、なにより、憧れてなった保育士という仕事が嫌になってしまうこともあります。

毎日元気に、笑顔で子どもたちのそばにいることができるよう、働きやすい環境づくりを推進している保育園を選ぶようにしましょう。

 

ご紹介したエピソードにもあるような「明らかに労働基準を逸脱している」という事例は、本来あってはならないものです。

厚生労働省ではメール相談の窓口なども用意していますので、困ったことがあれば利用してみるのも良いでしょう。↓

労働基準関係情報メール窓口 |厚生労働省